ふるさと納税についてNHKで特集をしていた。 私の考えの浅さが分かった。 ふるさと納税はもともと、地方の自治体の施策に賛同した人が、その自治体に寄付と言 う形 で、納税するものである。その分だけ、今住んでいる自治体から免税もされる。 最近、このふるさと納税が初めの趣旨とは違う形で、結構盛んになっているとのこと。 その要因は、ふるさと納税を納めた人にその納税自治体からその地域の特産品などを もらえることにあるようである。納税額の5割から8割相当の特産品がもらえる。 いわば、特産品のネット通販の行政版になっている。 納税する人は、その自治体の政策や施策に賛同するという政治参加の行動意識よりも、 全くの消費者行動となっている。 それが、昨年度は130億円にもなるのであれば、問題も発生してくる。 大きいのは、納税者の住んでいる自治体の税収入が、ふるさと納税された分だけ 減ると言うことである。もともと、これは、東京一極集中で、疲弊している地方の 活性化のためが基本趣旨であったのが、趣旨とは異なり、自治体間の競争を 生み出しているのだ。 しかし、この傾向は強まることはあっても、減少することはないのであろう。 自治体も、更に豪華な景品や、サービスでこのふるさと納税を増やそうとしている。 確かに、北海道の東川町などは自治体の税収の倍になるふるさと納税額が 寄付されている。これで、町は、いままで出来なかった育児向けの強化や 街のインフラ造りに使っている。 しかし、当初の趣旨に沿って、街の活性化にこれを活用している自治体もある。 埼玉県の宮代町では、そのホームページに町の施策を分かり易く、丁寧に 載せる事により、製作や施策への賛同を得て、幾つかの事業をふるさと納税で 対応している。納税者は、その景品欲しさではなく、町としての行動に共感 しているのである。今、少しづつながら活況化しつつあるクラウドファンディング の行政版である。 もう少し、この手法考えるべき時期でもあるようだ。 家族や地域が変わった。 監督の山田洋二さんが最近の社会の変化について、危機感を持っている。 60年代以降の高度成長時代を経て、経済優先の生活は便利、豊かになったが、 家族と言う社会の基本個体が壊れつつある。更に、過疎化や高齢化の進展に 伴う地域でのつながりも少なくなり、崩壊の危機を迎えている。 さらに、恐いのは、インターネットの拡大、スマホの拡大に伴い若い人が 人間そのものへの関心を低くし、社会的なつながりを知らないまま、大人に なって行く、という現実がある。便利さ、豊かさとの引き換えに、人間と しての行動規範、思いやりなどの心の豊かさを失いつつある。 ある地方の信用公庫の話 原点回帰でビジネスを見直す 落合氏は大手にできず、小さな組織にしかできないこと、つまり「自分たちの非価格競 争力をどう持つか」を徹底的に考えた。「その答えが原点回帰でした。私たち信用金庫 の設立趣旨は相互扶助であり、利用者保護が目的です。それを徹底的に追求する決断を し、ビジネスモデルの変革に着手しました」力を入れたのが『お客さま支援センター』 の開設だ。 「相互扶助の金融業として、地域の困った中小企業にお金をちゃんと貸す。貸した相手 が経営不振になると私たちも潰れてしまいますので、お客さまの問題点や課題を解決す るお客さま支援センターに力を入れる。言ってしまえば当たり前のことを当たり前にや ったということです」 金融業がコンサル機能を持つという発想は、落合氏が理事長に就任する前から業界全体 で言われていた。しかし、相談業務は利益を産まず、短期的に見るとコストばかりがか かる非効率な業務。そのため、金融機関の行うコンサルは実効性が極めて低かった。 それでも「大手では非効率となることも、工夫次第では効率に変えられる」と規模の小 ささを逆手に取ってコンサル機能の充実に邁進した。「課題は自社だけで解決しようと してはいけません。特に中小企業は人不足だから問題がどんどん先送りになってしまう 」。 同金庫の『お客さま支援センター』では、内部だけでなく、東京大学などを含め外部に 1000を超える組織とパートナーシップを結び、外部人材を活用することで、あらゆる課 題解決に対応できる体制を構築した。企業の相談は販路開拓や経営革新、事業承継や再 生計画策定、海外進出など多岐にわたる。「企業からの相談に対しては、相談内容だけ でなく、どのような経営者や企業に、どのような人材を提供するべきかという判断が重 要。専門家ネットワークだけでなく、専門家の目利きと言ったノウハウが当金庫の強み になっています」 人事戦略が変革を後押し 続けて変革期に活躍できる人材について、「世の中や社会やお客様が悪いという他責タ イプではなく、自分が変われば変えられると思う“自責”タイプ。そして、何事も“ポ ジティブ”に捉える人。そして“プロ意識”が高く“自ら仕事をする”タイプ。さらに “スピード”や“遊び心”が大切」と語った。同金庫はそれらの人材を揃え、活躍させ る人事戦略も優れている。優秀な人材を確保するため、一人あたりの人件費は業界内で も高い。中途採用も40歳以上は前職で年収1000万円以上の人材でないと採用しない方針 もある。 「給料の高い安いは、払っている名目賃金ではなく、実質賃金で見る必要があります。 1000万円払っている職員はそれ以上に利益をもたらしてくれる優秀な人材。しかし450 万円の職員 は自分の給料分も利益を上げていないこともある。能力が高いから給料が高いというの は、スポーツ選手の年俸と同じです」と、実質賃金を重視する。 また、ボーナス査定も同役職でも250万円以上の差をつけるなど成果を出した人を評価 する制度を徹底している。それ以外にも定年制の見直しや、若手職員を積極登用する立 候補制度など、職員の競争意識を高める人事制度が同金庫の変革を大きく後押しした。 ビジネスモデルの転換という決断、それを後押しする人事戦略の構築にリーダーシップ を発揮する落合氏。経営者としての成功のキーを次のように語った。 「トップが一つの事象をピンチと見るか、それともチャンスと見るかが大事です。変革 期には何もしない方が、リスクが大きいこともあります。自然界は強いものが生き残る のではなく、変化したものが生き残っています。強かった恐竜やマンモスは生き残れな かったが、小鳥は生き残っている。企業も同じです」落合氏の包み隠さず何でも語る姿 勢に、参加者からの質問が積極的に飛び交う会となった。 格差、限界集落などのキーワ-ドで伝えられる様に、社会は変化し不安定な時代を 迎えている。それが、インターネットの拡大、IT技術の急激な進歩により、 多くの人々に新しい対応を迫っているが、その多くは現状に固執し、自分の足元が 変わりつつある事を認めない。3つの壁、意識の壁、知識の壁、行動の壁を乗り越えよ うと するものは少ない。 ピケティの本が読まれるのも、少しはその認識があるものが、何故、どうして、の 状況を知りたいための1つかもしれない。 「21世紀の資本論」で伝えたかったことは何ですか? ピケティ教授: 欧米や日本などでは、暮らしは楽にならないのに、金持ちばかりがいい思いを していると感じている人が増えています。多くの人が今の資本主義の姿に 疑問を持つようになっているのです。 私は、誰のもとにお金が集まってきたのか、 歴史をさかのぼって明らかにしたいと思ってきました。 所得税制度が作られたのは、フランスなど欧州各国やアメリカでは1900年 前後です。日本ではもう少し早く始まりましたね。相続や資産に関するデータ については、イギリスやフランスでは18世紀にまでさかのぼることができます。 無味乾燥なデータが、実は、私たちの暮らしそのものを表しています。 Q: 調べた結果、何が分かりましたか? ピケティ教授: とりわけヨーロッパや日本では今、20世紀初頭のころと同じくらいにまで格差 が広がっています。格差のレベルは、100年前の第1次世界大戦より以前 の水準まで逆戻りしています。 Q: 資本主義が問題なのですか? ピケティ教授: 資本主義を否定しているわけではありません。格差そのものが問題だと言うつもり もありません。経済成長のためには、ある程度の格差は必要です。 ただ、限度があります。格差が行きすぎると、共同体が維持できず、社会が成り 立たなくなるおそれがあるのです。どの段階から行きすぎた格差かは、決まった 数式があるわけではありません。 だからこそ過去のデータを掘り起こして検証するしかないのです。 ■水はしたたり落ちなかった 富裕層と一般の人の間には、はじめは大きな格差があっても、経済成長による 賃金の上昇などを通じて、上から下に水がしたたり落ちるように富が広がり、 格差は徐々に縮小していくと言われてきました。 しかし、ピケティ教授は、20か国以上のデータを分析した結果、日本を 含めたすべての国で、そうではなかったと指摘。例外は、皮肉にも2つの 世界大戦の時期で、このころだけは格差は縮小したとピケティ教授は言います。 ■なぜ格差は広がったのか。 富を手に入れる方法を単純化すると、 ▽一般の人のように、働いて賃金やボーナスを受け取る方法と、 ▽資産家のように、金融資産の利子や株式の配当などを受け取る方法があります。 ピケティ教授は、富裕層の資産が増えるスピードが一般の人の賃金などが増える スピードを上回っていることが問題の根源だと強調。つまり、働いて稼ぐよりも 相続や結婚などを通じてお金を受け取るほうが手っ取り早いというのです。 そして、 ▽資産を持つ者がさらに資産を蓄積していく傾向がある、 ▽格差は世襲を通じて拡大すると結論づけました。 分厚い経済専門書がいったいなぜここまで幅広く受け入れられたのか。ピケティ教授 は大きな背景として、次のように述べています。 今、世界では、排外的な動きや極右の動きが広がっています。この裏には、 格差問題を簡単に解決できず、それにみなが気づいていることがあります。 国内で平和的に解決できないと、国どうしの緊張、世界レベルの紛争に つながってしまいます。 こうした不安に加えて、私は、富裕層の側にも、このまま格差が拡大して 分厚い中間層がなくなると、ビジネスが成り立たなくなるという警戒感 があることも背景にあると思います。これは、アメリカの企業経営者や 政府関係者と話していて、特に感じることです。 具体的に見ていきましょう。米国の上位10%の所得階層が国全体の所得に 占める割合を見ると、1910年には約50%でした。その比率は次第に減少し、 第二次世界大戦後は30%程度にまで下がります。ところが2010年には、 再び50%ほどへと大きく上昇しています。 富の不平等についてはどうでしょうか。1910年には、上位10%の富裕層が 国全体の富の80%を占めていました。大戦後にその比率は60%程度にまで 減少しますが、2010年には再び上昇して70%近くになっています。 こうした不平等拡大の背景には、資本対所得比の上昇があります。これは、 国内総生産(GDP)に対して国民全体が持っている資本蓄積(総資産)の割合です。 1910年には、資本対所得比は約700%の高い水準でした。それが戦後、戦災 による設備や家屋、インフラの損耗などもあり、200%程度にまで下がります。 それが2010年には500~600%へと増加しているのです。 「資本対所得比が上昇しているということは、蓄積された資本が投資などでうまく 回れば、資本所得(企業収益、配当、賃貸料、利息、資産売却益など)が 増えるということを意味します。つまり、富を持つ者はそれだけ大きな所得 を得て、ます資本収益率と経済成長率の乖離を指摘 ピケティは資本対所得比の上昇についてさらに経済理論的に深掘りして、 資本主義の基本特性として、資本収益率(r)と経済成長率(g)の乖離を実証的 に明らかにしています。資本収益率とは、投下した資本がどれだけの利益を 上げているかを示します。経済成長率はGDPがどれだけ増えているかです。 歴史的に見ると、戦後の一時期を除いて、資本収益率は経済成長率を上回って いるというのがピケティの注目すべき指摘です。つまり、「r>g」という不等式 が基本的に成り立つということです。 gの増加は中間層や貧困層を含めた国民全体を潤しますが、rの増加は富裕層 に恩恵が集中します。gよりもrが大きい期間が長くなればなるほど、貧富の 格差は広がり、富が集中化していく。これがベルエポックと「第2のベル エポック」における格差拡大の真相ということになります。 その意味で、rとgが逆転した1914~70年の約60年は画期的でした。戦後の 人口増加や雇用増に直結する技術革新によりgが上昇したことで、不平等 が是正されていきました。とりわけ第2次世界大戦後の30年間は「栄光の30年」 だったと言えま目に見えない形で「世襲の復活」が進行 では、どうして1980年代に「栄光の30年」は終わりを迎え、現在は再び 資本収益率(r)が経済成長率(g)を上回るようになったのでしょうか。 その一因として、ピケティはロボットやITの活用を挙げています。 ロボットやITの発達により人間は仕事を奪われ、賃金も増えず、消費も 増えないため、GDP成長(g)も抑えられていきます。一方で資本はロボット やITによって労働コストなどを抑制し、資本収益率(r)を回復しているのです。」 そのうえでピケティは、世襲の復活について警鐘を鳴らしています。 「第2のベルエポック」で大きな資産を築いた富裕層がその資産を子孫に 継承することで、100年ぶりに世襲による階級が復活しつつある。 しかもそれは、巧妙かつ目に見えない形で進行しているといいます。 ■低成長、人口減少の日本 ピケティ教授は、日本についても語っています。低成長、人口減少が続くと、 格差が拡大しやすくなると警鐘を鳴らしました。 日本は見事に逆戻りしています。1950年から1980年にかけて目覚 ましい経済成長を遂げましたが、今の成長率は低く、人口は減少しています。 成長率が低い国は、経済全体のパイが拡大しないため、相続で得た資産が 大きな意味を持ちます。単純に言うと、昔のように子どもが10人いれば、 資産は10人で分けるので、1人当たりにするとさほど大きな額になりません。 しかし、1人っ子の場合、富をそのまま相続することになります。 一方、資産相続とは縁がなく、働くことで収入を得て生活する一般の人たちは、 賃金が上がりづらいことから富を手にすることがいっそう難しくなっています。 その結果、格差が拡大しやすいのです。 ■では、どうする? それでは、いったいどう対応すればよいのか。 この論争で賛否が激しく分かれているのが「解決策」です。ピケティ教授は、 富裕層に対する課税強化を訴えています。 格差を縮小するには、累進課税が重要で、富裕層に対する所得税、相続税の 引き上げが欠かせません。国境を越えて資金が簡単に動かせる今、課税逃れを 防ぐために、国際的に協調してお金の流れを明らかにするなど、透明性のある 金融システムを作ることが必要です。 これには、世界中の富裕層などから猛烈な反発が起きました。稼いでも その多くを税金として納めるとなると、新しいアイデアやビジネスを生み出す 意欲がそがれて、経済全体が停滞してしまう、というのです。 富裕層の富の拡大を抑えるのではなく、最低賃金を引き上げたり教育の機会を 充実させたりして、一般の人の収入を底上げするべきだという意見も出ています。 ■広がる論争 この格差の問題、最近、国際会議でも大きなテーマになっています。また、 この夏以降、アメリカの大手金融機関や格付け会社が相次いで「行きすぎた格差 がアメリカ経済を弱くする」などと指摘。資本主義をいわば象徴する組織 の報告書に、正直驚きました。 世界の議論は、格差のあるなしではなく、「格差は拡大している」というのを 前提にして、いかに是正していくかという、新しい段階に入ったと私自身は 感じています。日本を含めた各国で、どう議論が深まっていくのか、 注目して見ていきたいと思います。 たて社会の人間関係は大分昔に読んだが、なるほどと思っただけで終わっていた。 中根さんの本は結構読んだと思っているが、古い本含めほとんどの本を捨てたので、 記憶が曖昧。 著者は、 日本では会社や大学のような所属機関や村のような一定の地域と言う場が重視されると 指摘している。会社など自分が所属する集団への帰属意識の強い日本社会の特性を 鮮やかに切り取っている。しかし、これは和辻さんなどが家、そしてその村を生活の 基本として既に分析している。 日本人は、自分を位置づける時、家、村、会社といった枠を重んじ、その中では、 たての人間関係が重要視される。ここ最近の社会の動きでは、少しその関係は弱く なった様であるが、まだまだ序列と言う意識は高いようである。しかし、2008年を ピークに人口が減少しつつある中、地域の相互扶助が困難となっており、場を 持たない人はドンドン孤立していくことになる。このため、自治体、村、地域は 横の連携を強めることの意識改革と行動が迫られてくる。特に、伝統行事が人手 不足の関係から廃れていることは、地域活性化にも大きな負の要因となる。 実態として残る縦社会を既に進化しつつあるネットワークを中心とした横のつながりを 加味することで、この課題を超えることが必要な時期でもある。 ピケティの言葉 格差問題について議論を巻き起こしたことを、どう感じている? 日本をはじめ世界中でこの本が歓迎されたのは、一般の市民が経済の知識にもっと親し みたいというニーズがあったからだと思います。 経済学は大げさなものではありません。 本の中で、資本と所得の歴史を明らかにすることで、経済学者だけに任せておけない重 要な問題があることを指摘しました。 私が予測した資本主義の未来について、誰かが異議を唱えても全くかまいません。 本を書いた一番の目的は、読者が所得、富、資本などといった問題を考えられるように なってほしいからです。 これまでの格差問題で主に焦点が当てられてきたのは、労働者の賃金でした。 OECD=経済協力開発機構の報告でも、その待遇改善が格差を縮める解決策とされて きました。 一方、ピケティ教授が注目したのは労働者の賃金ではなく、株や不動産、預金などの資 本でした。 この資本が格差拡大の大きな原因ではないかと考えたのです。 まず、資本はどれくらいあるのか。 調査によると、世界中の労働者や企業が1年間に生み出した富に対して、資本の量はそ の4倍以上蓄えられていたことが分かったのです。 ではこの資本を一体誰が手にしているのか。 アメリカの場合、トップ10%の層が全体の70%の資本を保有しています。 それに続く40%の中間層が25%。 残り僅か5%を50%の人たちが持っていることが明らかになりました。 一握りの人が資本を独占的に保有していることが、現代の格差を生み出しているとして います。 ところが、これまで経済学者の定説では、こうした格差は最初広がっていても、経済成 長をすればその差は縮まると考えられてきました。 ノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者が、20世紀前半のデータをもとに明らかに しました。 実際に格差が縮小する現象は、先進各国で見られました。 ところが、ピケティ教授が範囲を広げて調べると、予想外の事実が見えてきました。 差は縮まるどころか、常に開いていたのです。 格差が一時的に縮小していたのは、戦争で資本が破壊されたり、戦費調達のため所得税 や相続税が引き上げられたことなどが原因だとしています。 21世紀には、少子化で遺産が分割されないまま受け継がれることで資本を持つ階層が 固定化、格差が一層開く「世襲資本主義」の時代になるとしています ●アメリカではこの30年、成長した分の7割余りが上位10%の人たちの手に渡った ? 偏り過ぎですよね。 経済の成長が極めて好調だったら正当だったかもしれません。 年間成長率が10%だとしたらその人たちが見返りとして富の7割を得てもいいでしょ う、それでも偏り過ぎですけど。 問題は、この期間のアメリカ経済の成長が、歴史に照らすと比較的平凡だったというこ とです。 1人当たりのGDPの年間成長率は、平均でおよそ1.5%にすぎません。 これで富の7割が上位10%の手に渡れば、残りの国民にとっては大損ですよね。 ●本で“格差は潜在的には、それは現代の民主社会にとって基本となる能力主義的な価 値観や社会正義の原理とは相いれない水準に達しかねない”と記しているが、このまま だと危機が生じると感じている? 格差それ自体は妥当な水準であれば問題ありません。 イノベーション、成長のためにはある程度は必要です。 しかし、問題は極端な格差です。 あまりに大きすぎると、やがて社会の流動性を失わせ、経済成長にとって有益ではあり ません。 さらに民主主義を脅かします。 政治的な発言力や影響力において、極端な不公平さを招きます。 例えば、政治運動への献金やメディアを通して過度な権力を手にした場合、それは潜在 的な脅威になると思います。 ●保護主義やナショナリズムが台頭してくることを懸念している? はい、これは大きな脅威です。 ナショナリズムの台頭は、格差が引き起こすとてもネガティブな政治問題です。 日本やヨーロッパは極端な格差の状態にはありません。 しかしこの数十年で拡大しており、これからも拡大する可能性があります。 今のうちに対処したいのです。 ●成長によって誰もが豊かになるという、経済のいわゆるトリクルダウン効果について どう見る? ※トリクルダウン 高所得層や大企業の経済活動を活性化させることで、富が低所得層に向かって流れ落ち 、社会全体の利益につながるとの考え。 市場任せでは、すべての問題を解決できません。 私は市場も競争も支持していますが、万能ではないのです。 私たちは市場のトリクルダウン効果に期待し過ぎるところがあります。 それは、うまくいくこともいかないこともあります。 競争を促す力が格差をなくす方向に働くこともあれば、その逆に働くこともあります。 自然に任せておけば釣り合いが取れると考えるのは誤りです。 ●市場メカニズムの万能性は信じていない? 私たちには、資本主義や市場の力をコントロールする民主的な制度が必要です。 そして利益が資本と労働のどちらか一方だけに偏らないようにしなければなりません。 (つまり、資本・資産の拡大と格差の広がりをコントロールできなくなってきた?) 世界経済の成長のスピードに比べても最も豊かな富裕層の割合が異常な速さで増え続け ています。 こんなことは、もちろん長続きしません。 これからどうなってしまうのか誰にも分かりません。 この、私たちが分からないこと自体が問題なのです。 まず何が起きているのかを知る必要があります。 金融の透明性を高め、国境を越えて、資本に関する情報を共有するのです。 そうすれば、たとえ何が起きていても対処することができるのです。 ●本の中で、世界のGDPの10%近くの富が行方不明だという研究者の報告を引用し ているが、多くの資産が世界のどこかに隠されていて、だからこそ透明性が重要だと考 えている? そのとおりです。 タックスヘイブンこそが極端な格差を生む大きな要因です。 これは民主主義に対する挑戦です。 金融の透明性を高め、国境を越える資本の情報を自動的に共有できるような仕組みが必 要です。 もしタックスヘイブンを放置したまま貿易自由化を続け、多国籍企業に最小限の課税も せずにいたら、グローバル化は自分たちのためにならないと考える人が増えるでしょう 。 ですから、透明性を高めるためのあらゆる手段を取る必要があるのです。 動画を見る “不平等”にどう向き合う ピケティ教授の提言 ピケティ教授が、このままでは格差はより深刻化すると警告する資本主義の未来。 資本を持つ人とそうでない人との格差をこれ以上広げないために、ある対策を提唱して います。 それは、資本に対する課税です。 しかし政府が課税しようとしても、資本の所有者は税金の安いほかの国に移動させ、逃 れる可能性もあります。 そこで、こうしたグローバルに移動する資本に対して、各国が共同して課税できる仕組 みを作るべきだとしています。 この意見に対し経済学者やメディアの中から、経済成長を妨げるうえ、実現不可能だと して反発の声が上がっています。 しかし今、世界では資本に対して課税を行う仕組みが検討され始めています。 資本に対するグローバルな累進課税、あまりに理想的すぎるのでは? すぐに完璧なグローバル政府が出来て、対処してくれるなどとは思っていません。 しっかりと理想を掲げ、少しずつできることを考える必要があります。 私の理想は、各国政府が税制度を改善して国際的な透明性の向上など協力を進め、同じ 方向に進んでいくことなのです。 国際的な協力が得られないからといって、何もせずにいていいわけではありません。 国際的な協力を求めつつも、自分の国で今できることをやるべきです。 できることはたくさんあります。 税の国際的な引き下げ競争のせいで何もできないというのは、大げさどころか大間違い です。 ●本の中で、100年前には所得税も反対されていたことを引き合いに出しているが? 格差と課税の歴史は驚きに満ちていて、100年前、所得税は決して実現しないといわ れていましたが、今では当たり前です。 そしてつい最近も、日本で相続税の累進制が引き上げられました。 これは富に対する税金です。 何しろ日本は、ヨーロッパの多くの国々と同様、ある問題に直面しています。 人口の減少により、アメリカ以上に過去に蓄積された富の相続が社会に与える影響がま すます大きくなっていくはずです。 日本では所得の格差はアメリカほど大きな問題になっていないと思いますが、過去に蓄 積された富と相続された資産の増加は、アメリカより多いのです。 それゆえ、日本社会において相続された資産が、今後10年でさらに重要になるかもし れません。 これに対処するために所得や収入が伸び悩む一方、富が膨張している時代においては中 間層と低所得層の所得税率を少し下げたほうがいいかもしれません。 ●焦点は、格差が正当であるかそうでないかということ? そのとおりです。 (それが民主主義にとっても最も重要?) 格差は、公共の利益の範囲内であれば正当化されます。 正当化されるなら格差は認められます。 でも困ったことに、すべての格差が正当化できるわけではないのです。 だから格差が行き過ぎず、正当化される範囲内であることを検証する組織や政策の必要 性を忘れてはいけないのです。 ●何があなたを突き動かしている? 私は民主的な議論ができるよう情報を提供し、社会をよくしたいのです。 もちろん、本一冊では小さな一歩にすぎません。 それでも1人でも多くの人に、自分で考える市民になり、政府に圧力をかけ、この社会 と経済に主体的に参加してほしいのです。 結局、この世界を作るのは私たち1人1人なのです。 こんな重要なことを一部の専門家に委ねてはいけないのです 本の締めくくりより “市民たちは、お金やその計測、それを取り巻く事実とその歴史に真剣な興味を抱くべ きだと思うのだ。 お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする。 数字との取り組みを拒絶したところで、それが最も恵まれない人の利益にかなうことな ど、まずあり得ないのだ。” すべての人がこうした問題を直視するべきです。 経済学は何も分からない、私には複雑すぎる、自分の意見なんてない。 いいえ、誰でも意見はあります。 誰でも意見を持つべきです。 そしてそれは、問題を理解したうえでの意見でなければなりません。 (お金を大量に持つ人々は、必ず自分の利益をしっかり守ろうとする?) ええ、それは人間の本性です。 つまり多くのお金を持っている人は、中には気前のいい人もいるかもしれませんが、経 済ゲームに勝利したことが公共の利益にもかなっているというふりをして、格差が正当 だと主張するのです。 彼らが常に間違っているとは言いません、誠実なときもあるでしょう。 でも常に正しいわけではない。 だから彼らの主張をよく調べて、その言い分が正しいのか間違っているのか見極めるこ とが重要なのです。 (常にみんなでチェックをしていく?) そうです。 日本であれ、欧米であれ、先進国は1970年以降経済的な不平等は拡大している。 ピケティ教授は、特に人口減少が続く日本では、低い成長率や資産の相続によって、今 後、富の集中、格差拡大が加速するおそれがあり、相続の恩恵にあずかれない若者が自 分で働いた所得だけでは家を持つことが困難になると警告しています。 経済的不平等のしわ寄せを大きく受ける若者に対するさまざまな施策や、男女共に働き やすい環境を整備して少子化問題に取り組むことこそが、日本では経済的な不平等の拡 大を防ぐためにも極めて重要だという、ピケティ教授の指摘が強い印象を残しました。
2016年10月9日日曜日
々の記録6(ふるさと納税、ピケティ再録、タテ社会の人間関係)
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